ココヤシ1本を切るのに1年…
 のどに刺さった小骨がとれたようにすっきりした。ようやく倒れそうなココヤシを切ることができた。

 実は1年くらい前から、隣の空き地に生えているココヤシが気になっていた。そこは雨が少しでも降ると、どろどろになってしまうようなゆるい地盤。私たちの家からほんの数メートルのところに1本ひょろ長いココヤシがあった。

 それが、風が吹くとワッサワッサと揺れる。空き地の向こう側は水田になので、木も何も生えていない。つまり風が吹くとさえぎるものがなく、ダイレクトにこちら側に吹き抜けてくる。もしココヤシが倒れることがあれば、間違いなく我が家に直撃するだろう。

 隣の空き地のオーナーは私たちの裏手に住んでいて、よく知っているご近所さん。最初は立ち話程度に、「木が倒れそうで危ないから切ってもらえないかしら?」という感じで話したがいっこうに切るそぶりを見せないので、ちょうど1年くらい前に正式にお願いという形で家を訪ねた。

 「了解!了解!」という愛想のいいことばが返ってきたので安心してたら、1ヶ月たってもそのままの状態。スリヤンガがもう一度話しに行くと、「倒れないように他の木に針金で結ぶから」と言われる。はっきりいって、同じようなゆるい地盤に生えている木に結んでも無理(しかも周囲にその危ない木よりも大きな木はない)。というか、倒れるときは2本まとめて倒れてくるはず。

 ほとんど実をつけない木なのに、どうして切るのがいやなんだろう。木自体にそんなに価値はないし、切るためのお金は私たちが払うと言っているのに。疑問に思ってスリヤンガに聞くと、「プライドだよ。他人に言われてそれに応じるのがイヤなだけだよ」とのこと。

 このオーナー。昔はこのあたりの地主で、一番のお金持ち。今は土地は多少持っているもののごく普通の家だが、プライドは捨てきれないらしく、近所の人とは付き合わない(相手にしない)という態度をとっている。しかし、我が家は別で、外国人だからか最初から愛想がよく、よく庭で取れたフルーツを持ってきてくれたりとおつき合いをしていた。それが今回の件で態度が一変。気に障ったらしい。

 しかし、万が一ココヤシが倒れてきたら、家が壊れるだけでなく、私たちの命も危ない。もう話し合いでは無理と判断して、昨年の9月にヒッカドゥワの市役所に手続きに行った。日本だったら民事訴訟になるのだろうか。スリランカでは裁判所に持ち込む前に、市役所で取り扱ってくれる。

 必要な書類を提出すると、数週間して担当者がココヤシのようすを見に来た。確かに危ないと判断され、市役所から「1ヶ月以内に木を切るよう」という手紙が、私たちとオーナーのもとに届いた。

 しかし、約束の期日を過ぎても切るようすがない。再び市役所に出向き、その旨の書類を書いて提出した。また数週間すぎて、同じような内容の手紙が届いた。すると、オーナーが針金で他の木に結びつけた。その場で、「それじゃあ倒れるのは防げないから切ってくれ」と言ったが、「これで大丈夫だよ」と聞き耳もたず。

 その後オーナーは市役所に「針金で補強したから大丈夫」という書類を出したらしく、私たちにも市役所からその通知がきた。仕方なくもう一度市役所に行き、「それでも不十分だから」と、再度見に来てくれるよう頼み書類を提出した。

 数週間して、前回と違う担当者が見に来た。やはり危ないと判断され、市役所から「1ヶ月以内に切るように」という手紙が届いた。しかし、また約束の期日を過ぎても切るようすがない。一応、強制の効力がある正式な手紙なので、オーナーが無視する場合、市役所を通じて警察官を派遣してもらい、その立会いのもと私たちが切ることができる。

 そろそろ無理にでも切ろうと思っていたところ、市役所からまた手紙が届いた。見ると今までの内容と変わり、針金で補強してあるのでそのままで大丈夫と書いてある。おかしい。

 一度針金で補強したあとのようすを見に来てもらい、その後切るようにとの手紙が来ているのに、なぜいきなり変わるのか。しかも市役所からの手紙だが、今までやり取りしていたものとフォームが違う。

 市役所に行って事情を聞くと、どうやらオーナーの友達が市役所にいるらしく、その人を通じて裏工作をしたらしい。なんて汚い!と腹が立つがスリランカではよくあること。自分に都合のよいコネクションを持っているもの勝ちなのだ。

 しかしそんなことで引き下がる私たちではない。それなら私たちも自分たちのコネクションを使うまで。本当は直接市長に会って話ができればよかったが、ちょうど東部地区の選挙前でトリンコマリーにしばらく行って留守とのこと。

 市役所はとりあえず置いておいて、ヒッカドゥワの警察署に行き、事情を説明して書類を作ってもらう。ただこれだけだと、いつ警察官が見に来てくれるかわからないので、友達のゴール署長に電話してヒッカドゥワに連絡してもらう。

 上からの命令だと早い。その日に警察官が来てココヤシをチェックし、オーナーのところに話に行った。この場合、法的な強制力はないが、圧力をかけることはできる。それでダメでも、後は市長が帰ってきてから話をしようと思っていたら、急に数日前オーナーが木を切ってもいいと言い出した。ただしお金が欲しいと。

 一応彼らの木を切るのだから、木を私たちが買うという形にしてお金を払うのはかまわないと伝え、相場の値段を言った。しかし、それでは足りないという。本来、市役所からの通知では木どころか切るのもオーナー側の負担になる。それを私たちが木を切り、しかも木の分のお金も払うと譲歩しているのに、なんてせこいんだろう。結局私たちは言い値をゆずらず、オーナーは家族と話してみると言って帰っていった。

 そして今日。いきなりオーナーが手配した人が木を切り倒した。お金はいらないということらしい。オーナーの屈折した心はわかりかねるが、良かった良かった。これでどんなに風が強い日でも安心して眠れる。しかしたかがココヤシ1本切るのに1年かかるとは。これで裁判沙汰になったらどれくらいの時間とお金を浪費するのだろう…。

8-5-14ココヤシ切る
 先に葉を落としてから斧で切る
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コメント

夕張メロンこと野口です
しばらくです、先月17日より1週間、すりらんかに滞在をしておりました。
仕事柄、政府のお偉い人をだいぶ知っておりますが、何か役所に申請をする場合には、関係のない部署の人でも経由すると、即効で処理が出来ますよね。この国では使えるコネがあるのであれば使うに限りますね・
---------- 夕張メロン. URL│05/16. 08:41 [ 編集 ] -----

うわ~、タイヘンでしたね。お疲れさまです。どうせ切るなら一年も時間かけずにさっさと切ればいいのにと思いますが、その地主さんが納得するのには一年が必要だったのでしょうね(笑)、しかし、少しずつじわりじわりと心理戦で勝利って感じですね~。
隣人ともめることって、ここでもやはり多いみたいですね。先日、隣家との境界線でもめていたオットの友人が「警察に行かなくてはいけない」と言っていたので、ついに警察沙汰になってしまったのかと驚きましたが、なるほど、警察はこういうことに関して動いてくれるという訳だったのですね。今後の参考になりました! もちろん、警察のお世話にはならないに越したことはないですけどね…(笑)。
---------- イエスタデイ伊藤. URL│05/16. 12:05 [ 編集 ] -----

夕張メロンさん
はっきりいってしまえば、この国の役人は「仕事しなさすぎ」ですよね。コネを使って初めて仕事にとりかかるわけですから、なんでも時間がかかるはずです。本当にできることなら一番係わり合いたくなりところです(笑)。
---------- Reiko. URL│05/16. 15:02 [ 編集 ] -----

イエスタデイ伊藤さん
スリランカだとこんなのしょっちゅうみたいですよ。実はこのオーナー、自分の家の門近くの木が倒れそうで危ないと、隣人を訴えているそうです。その隣人も無視しているようですが(笑)…。
境界線はよく問題になるみたいですね。うちの向かいに住んでいるジャマイカ人が1フィートくらい多めに敷地を取って外塀を作っていたことが判明して、そのオーナーともめていました。結局その分お金を払うことで決着したようです。
スリランカで土地を持っていると、管理が大変そうですね。勝手に家を建てて住んでしまう人もいるようですし(笑)。
---------- Reiko. URL│05/16. 15:12 [ 編集 ] -----
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