スリランカで手術(しかも公立病院で)
 検査前の注意事項。夕食は取っていいが、夜10時以降は水を含め、何も口にしてはだめ。夜中の3時に下剤(座薬)を入れ、朝6時までに病院に来て受付をすること。

 本当だったら、前日から入院させられるところだけど、担当のドクターもスリランカの「公立病院」が衛生面などから外国人にとって長居したくないところというのがわかるからだろう。ちゃんと注意事項を守ると約束をさせられ、当日の朝の入院でいいことになった。

 この日は私立病院で看護師の婦長をつとめる叔母がついてきてくれることになっている。私は荷物をまとめ、スリヤンガとアンマとトゥクトゥクに乗り込み病院に向かう。

 病院前でマッリ、叔母と落ち合い、受付をすませ、病室に行く。そこは20数台のベッドが2列に並べられた大部屋で、中央に大きな机が置かれ、書類が山積みになっている。まずはそこに座るように言われ待っていると、ドクターが来て手術のための診察と検査を始める。

 プライバシーのかけらもなく、だらけた感じで今日の手術を待っている女性たちがベットに腰掛け、珍しい外国人の診察を眺めている。「同じ状況なら、私でも注目するだろうな」と思いつつ、ドクターの質問に答える。体温をはかるときはヒヤヒヤしたが熱はすっかり平熱に戻っていてひと安心する。

 なんだかワサワサとした落ち着かない病室の中心で、血圧を測られたり、血を採られたり、脈をはかられたりした後、小さな小ビンを渡される。尿をとってこいということらしい。そしてトイレに行って、やっぱり昨夜からの入院でなくて良かったと思った。

 予想通り病室もまったく清潔感がない。ドクターや看護師、事務職員といった病院関係者は屋外も室内も靴をはいたままなのに、なぜか患者や付き添い人だけが病室には裸足で入らないといけないというおかしなシステム。

 トイレ自体は汚くはない。ただそこに至るまでの通路が水浸しで、汚い水に足をつけないと通れないようになっている。見ると、排水溝がつまっているらしい。病院なんだからすぐにきれいにできないものだろうかと思うが、誰も気にしないらしい。しかたなく爪先立ちで、一番水の浅い通路の端を通りトイレに行く。

 その後、服を脱がないといけない診察は、さすがに病室中央でできないため、廊下の隅のスペースに案内される。ボロボロの布が目隠し用にかけてあるが、ベッドや器具が古いだけでなく、すべてが触りたくないくらいに汚い。床には血がたれていてハエがとまっている。もちろん天井にはクモの巣。壁にはアリだって歩いている。「今日だけ、今日だけ」と自分に言い聞かせつつ、深呼吸する。

 ところで、スリランカの病院に入院するときに持っていくものといえば、1)ベッドシーツ、2)枕、3)かける布。一応病院でもベッドにシーツはかけてくれるし、枕もあるけど、汚いから自分で持っていったほうが安心ということだろう。手術のときには白いブラウスと白いスカートというのがいいみたい。持って行かなかった私は、慌ててスリヤンガが買いに行く羽目になった。

 そうこうしているうちに7時半になり、髪の毛をまとめ帽子をかぶせられ、名札をつけられて移動用のベッドに乗せられる。見ていると他の患者は、病室にあるブッダ像に熱心にお参りをしている。そういえば私も今朝家を出るときにスリヤンガに言われ、我が家のブッダ像にお参りをしてきたのだった。

 病気でもないのにベッドに寝かされ、誰かに押して行ってもらうというのは気恥ずかしい感じだが、担当のおじさんたちが実に乱暴で、落ちそうになるくらいグングン飛ばす。しかも、前がつかえていたからといって、直射日光のあたる場所でしばらく放置される。いくら朝だからといって日差しは強い。まさかスッピンで日光浴させられるとは思いも寄らなかった。

 なんとか手術室脇の廊下まで連れて行ってもらう。ちょうど約束の時間だったが、ここからが長かった。たっぷり2時間、そこでも放置される。ちょうどドクターたちの控え室の前でもあるので、次から次へ若いドクターたちが通る。すると、「あれっ、なんでこんなところに外国人?」てな感じで私の顔を見て、お腹の上に置かれたカルテを見ていく。

 いちいち暇なドクターたちの質問に答えるのも面倒になって、目をつぶっていたら本当に眠ってしまっていた。すると近くで聞き覚えのある辺りに響き渡る声。私の担当医の声だ。ようやく手術室に入れてもらえる。

 中はさすがに冷房がきいている。私は入院も手術も初めて。日本でも経験したことがないので比べようがないが、ドラマで見るようなライトの下に寝かされ、その周りをずらっと20人ぐらいに取り囲まれた。どうやら勉強中の若いドクターらしい。

 なんだか落ち着かないなあと思ったが、すぐに麻酔を打たれ、次に目覚めたら病室のベッドだった。見回すと朝の病室よりきれい。どうやら手術後は少しはましな病室に入れられるらしい。

 時計を見るとちょうどお昼。手術から1時間半近く寝ていたらしい。身体がだるいのとお腹がちょっと痛い程度で、お腹を切ったという感じはあまりなかったが、つらかったのが「のどの渇き」。昨日の夜から水一滴飲んでいない。ところが、術後4時間は飲んではだめだという。「あと2時間も…」。気が遠くなりそうだったので、無理やり寝ることにした。

 そして、2時。ようやく水のお許しがでる。ちょっとずつ口に含んで、飲み込む。なぜか甘く感じる。水ってなんておいしいんだろう。それだけでだいぶ元気になる。昨日も一日ほとんど食べなかったので、丸一日半何も食べてないことになるが不思議とお腹は空かない。

 本当は手術後24時間、病院は患者をチェックしないといけない義務があるそうだが、私の場合は「術後良好。問題なし」ということで、特別に17時に帰してもらうことになった。抜糸は4、5日後ということだった。

 17時にスリヤンガが迎えに来て、ゆっくり運転してもらってトゥクトゥクで帰る。さすがに全身に力が入らないので、クロスケにはちょっと頭をなでる程度にしてすぐにベッドに入る。とにかく昨日の熱が下がって今日の検査を受けられたことに感謝しつつ、すぐに眠った。
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